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不可思議な龍と治癒士の話(リヴリー擬人化小説) [擬人化小説]

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素敵な写真は素材サイト君色さんからお借りしました。

敬愛するまひろさん宅、夜刀彦(やとひこ)さんをお借りしました!
宵助と夜刀彦さんが怪物の森で出会うお話です。

夜刀彦さんの…男らしい可愛さ…人懐っこい笑顔、素敵ですよね…!
大好きです…!
書かせていただいて、幸せでございました。ありがとうございました!

絡みSSはつづきにて公開しております。.



不可思議な龍と治癒士の話



(1)

怪物の森――
モンスターツリーが意思を持ったように枝を広げ、昼なお暗いその場所には、
スズメバチ、ジョロウグモ、カマキリ、無数のモンスターが蠢いている。

緋色の髪を地面に垂らし、木々の合間から差し込む光を見つめ、息を殺す男がいた。
大木の根元にできた陰に身を寄せ、大振りの刀を抱いている。ツノツキウリューの青年であった。
見事な色合いの着物は擦り切れ、黒色の野袴は泥と血でしっとりと濡れていた。

あまつさえ、太腿に空いた大穴から、とくとくと血が溢れている。
このような状態にもかかわらず、脂汗をかきながら、青年は遊びを楽しむ子どものように笑っていた。

血生臭いこの森には似合わない、飄々とした明るさを持った青い瞳。
華やかで、愛嬌のある男だった。
人懐こいその笑みを、いつまでも見つめたくなるような、不思議な魅力があった。

治癒士の少女、宵助(よいすけ)が彼を発見した時も、
街で声をかけられた時のように、「やあ、お嬢ちゃん」と気さくに笑って手を振った。


(2)
治癒士とは、怪物の森で出会ったハンターの傷を癒し、無事に島に帰還させる使命を持つ、衛生兵のような存在である。
普段は決まったハンターのパートナーが居るが、存在意義が「傷ついた人を癒すこと」なので、出逢ったリヴリーなら、誰でも無償で治療する治癒士が多い。

宵助も青年の怪我に気付くと、道具を取り出し、ウルパコ種の独特な耳をぴこぴこ動かしながら、問答無用で治療を始めた。
包帯を巻くたびに、ふんわりとした銀髪が青年の鼻先を軽くくすぐる。

「あなた見かけない顔だわ。こんな森の奥に、どうして一人で?」
「遊んでたらこんな所に。ちょっと深追いしすぎたかな~」
「まあ、いつか帰れなくなってしまうわよ。気を付けてね」

茂みひとつ隔てた道では、大型のジョロウグモが獲物を糸で縛り、巣に持ち帰っていくところである。
二人は気配を殺し、声を潜めて話す。
それでも青年は二の腕の裂傷を手当てされると、「ありがとな、これで着物が汚れなくなったぞ」と屈託のない笑顔で言い放ち、宵助をくすくすと笑わせた。
冷たく湿った土の温度に、やわらかな会話と、人肌の温かさが染みるようだった。

「分かっていると思うけれど、こっちの太腿、傷の中で骨も神経もめちゃくちゃになっているの。治癒の技をかけた方がいいわ。あなた、お名前は?」
「やとひこって言うんだ。夜の、刀に、顔の左側」
夜刀彦と名乗った青年が、かりかりと節だった指で地面を掻き、名前を書いた。

「夜刀彦、さん。とてもいい名前ね。少し傷を手の平で覆ってくれるかしら」
「こう?」
「下の方も、光が漏れないように――そう、いいわ。 /cure 夜刀彦 」

夜刀彦の大きな手に自分の手を乗せ、小さく宵助が治癒の技を唱えた。ほわ、と微かな音と共に、緑色の光が傷を吸い取っていく。温かな手に撫でられているような心地である。宵助が手を引くと、傷口は完全に消えていた。

「動かしてみて、違和感はない?」
「無いぞ。凄いな、どうもありがとう。……今、手持ちが無いんだけどいつか必ず」
「え?」
「礼をしたいんだけど、あの、金が無いんだ」
困ったような笑みをじっと見つめた後、宵助は小さく噴き出した。

「生まれて初めてよ。治療をして、お礼をくれようとした人」
「そ、そうなのか?」
「ええ、ふふっ、あなた、不思議な人ね」
でも、その不思議さが好ましかった。
この森において、治癒士の無償の治療は当たり前のものだ。
おおよそ血生臭いこの場所には似合わない、夜刀彦の明るさや情の深さが、宵助には眩しく感じられた。心遣いがくすぐったくて、思わずはにかんでしまう。頬さえ熱い心地がした。

(これ以上一緒にいたら、この人を優先的に治療してしまうわ)

きょとんとした顔の夜刀彦に微笑みかけ、宵助は立ち上がった。茂みの向こうを覗くと、静寂に包まれている。大型のジョロウグモは遠ざかったらしい。

「お礼なんかいらないわ。私が好きでしたことだもの。あなたが沢山狩りをして、無事に島に帰ってくれるのが、一番の喜びよ。元気でね」

言い終わると同時に、宵助は茂みの向こうへ身を躍らせ、森のさらに奥へと進んでいく。
「お嬢ちゃんも、気を付けるんだぞ」
夜刀彦が声をかけると、宵助は振り返り、嬉しそうに手を振った。



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まひろ

笹木さんこんばんは…!
あっちでもこっちでもすみません、ちょっと長くなりそうだったのでこちらに…!><
題名がすごく好きです、不可思議って、龍って言っていただけてうれしいな…!////
森の奥で怪我している夜刀彦の様子がイメージどおりでうれしくなりました。
モン森での狩りのルール…というか、常識みたいなものも知らなそうだと思うので、治癒に対してお礼を…って言い出しそうなところも私的にすごくしっくりきます。
つかんでいただけて感謝!vvv
一瞬の邂逅だけれど、銀色きらきらなウルパコさんは夜刀彦の心に深く残ったんじゃないかなぁと思います^^*
また逢えたらいいな、って思ってるんじゃないかしら…
宵助さんが大好きで、いつかうちの子がお話しできるシーンがあればいいな…と思っていたので、SS、とっても幸せでした!ありがとうございます!!vvv
こちらこそ、どうぞこれからもよろしくお願いします~!!vv
by まひろ (2012-09-22 23:37) 

笹木

>まひろさん
こんばんはですー!ああ、ブログにまで…!ありがとうございます…!!
題名、本文を書き終わった後に自然に浮かんだ言葉を使いました。
怪物の森で生きてきた宵助にとって、夜刀彦さんの天真爛漫さは、まさに「不可思議」だったのですね。

宵助も、夜刀彦さんの人懐っこい笑みを想い出して、(本当に不思議な人だったわ。また、逢えたらいいのに)なんて微笑みながら思ってるんじゃないですかねー!うふふ!

宵助を大好きとのこと、とても嬉しいです…!ありがとうございます…!
私も夜刀彦さん関連のツイートを発見するとテンションが物凄いことになってしまうくらいに、彼の魅力に参っています…!
夜刀彦さんを書かせていただいて、幸せでございました!
本当にありがとうございました…!
by 笹木 (2012-09-23 00:29) 

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